1.洗う
硯を洗わないでいると、水分が蒸発して墨のカスが墨池や墨堂の周囲に溜まり固まってしまいます。墨は炭素と膠が成分なのでこびりつくと容易には取れません。
タライなどに水を溜め、柔らかい布がスポンジを使えば安全に洗えます。角のこびり付きがあれば、耐水ペーパーなどで軽く落とします。
2.乾かす
洗った後はそのまま伏せて自然乾燥させます。直射日光に当ててはいけません。
高価な硯が裏面まで丁寧な彫りがしてあるのは「伏せる」ということを前提にしているからです。
3.仕舞う
硯は落とすと欠けたり割れたりします。その時は無事と思っても内部にひび割れが入っていることもあります。扱う際は両手で丁寧に扱い硯箱に仕舞います。
机や棚に置く場合も蓋のある箱に入れる方が安全です。他のものが当たったり上に落ちて痛めることがあるからです。
4.汚れが取れなくなったら
学童用の普及品や型物の量産品であれば、軽く砥石をかけても良いですが、それ以外はプロに任せる方が良いです。
5.墨の下りが悪くなったら修理に出す
研ぎ直しで鋒鋩を立ててもらいます。この作業によって硯は長く使えます。
手で触って滑らかな硯ですが、電子顕微鏡で見ると鉱物の粒子が立って調理道具のおろし金のような状態になっています。それを鋒鋩と言い、硯の良し悪しや墨との相性を決定します。
鋒鋩は、長年使っているうちに抜けたり摩耗するので、発墨(墨の下り)が悪くなります。定期的に修理(鋒鋩の研ぎ出し)に出していただければ、その硯本来の擦り心地でお使いいただけます。お使いの墨で試し摺りをしながらの調整も致します。
我流のお手入れでは、返ってキズをつけたり鋒鋩が弱まることがあります。
専門家が適切な砥石で磨き直せば元通りになります。また、周囲にも目に見えない細かい傷がついていることがるので、当店では全体を磨き直し、拭き漆やロウで側面・裏面を仕上げます。姿も使い心地も生まれ変わります。
茶室での作法と同じく持ち主に失礼のない様に気をつける。指輪、ネックレスなどの金属類は身につけないことも他の道具と同様の礼儀です。触る時は、持ち主の許可を得ること。叩いて音を確かめるなどはしてはいけません。
片手で持ち上げたりはせず、お茶碗の拝見の様に自分が姿勢を変えて左右から拝見します。
気になる硯があったら、店の人に申し出て安全な机や販売台に出してもらう。裏返しなども任せる方が良い。許可を得てから触る。実用硯ではあっても爪で引っ掻いたり叩いたりはしない。唾をつけて擦り付けるなどは以ての外です。それらのことで簡単に墨のおり具合や保水力を判断できるものではありません。
素手で扱うと手の脂跡が残るので手袋を着用するか布で保護しながら扱う。指跡が付いてしまったら柔らかい布で拭く。取れない場合は布にベンジンを染み込ませて汚れを拭き取る。
底面は傷が付きやすいので、机の上などで引き摺らない。重いものほど気をつける。
展示やプライベートで飾る場合はフェルトや袱紗など敷物をする。埃は柔らかい布か化粧用の筆で払う。
仕舞う際は箱に入れて保管する。箱の底に和紙を引いたり、和紙でくるむ、乾燥剤を置くなどの湿気対策をする。
冬季、寒暖の差が激しい場所で保管すると結露します。
貴重な石材で作られている、細かい細工が彫ってある、シンプルなデザインの方硯の角など、欠けやキズがつきやすい硯は、布に包んで箱に入れて保管する。
その他ご質問ご相談等、どのようなことでもお気軽に下記へご連絡ください。
鳳鳴堂 (ほうめいどう) 電話 0536-35-1188